第3回 ひとことで言えば
●シーダ・バーンが雑誌でも注目を集め,一般の方々が頻繁に訪れている理由は様々に言われていますが,ひとことで言うとどんな魅力があるんでしょうか?
▲難しい質問です.言葉というものが断片的伝達にはすぐれているのですが,全体的となると不向きなんです.言葉を尽くせば尽くすだけ相手に誤解や疑心が出てきたりすることがあるのですね.
しかも文字にすると矛盾点や筋道の外れることに気がいってしまいます.
本当は俳句や短歌でも詠んで伝えたほうがよいかもしれません.
「風そよぐ シーダ・バーンに 梅雨の空」なんて(笑).
・・・・・ひとことでと言われるならシーダ・バーンの魅力は「シーダ・バーン」という名前に込められていますとでも言うしかないですか.
●その気持ちわかるような気がします.ではそのシーダ・バーンという名前について,「杉の納屋」という意味ですが名付けた由来を聞かせてください.
▲この家を考える原動力になったのは日本の木造,伝統工法であったことは確かです.
しかし日本の伝統文化だけを受継ぐ気持ちはなかった.私はいわゆる戦後世代,団塊世代の人間ですから,日本古来の伝統を無視するどころか,むしろ米英の文化の洗礼を受けているんですね.
ですから家の愛称を決めようとしたとき,横文字しか頭になかったんです.何とか亭,○○庵なんてハナからなかったんです.
もう40年も前になりますが,ビートルズが「ラバーソウル」という不思議なタイトルのアルバムをだしました.当時歌詞の意味なんかも,わけがわからなかったんですが,ポップスとしては斬新な音楽を,そのタイトルだけでイメージさせたわけです.
同じ頃ビーチボーイズも「ペットサウンズ」という,これは20世紀のポップスの金字塔とまで評価されたアルバムをつくりました.革新的でありながらわかり易く誰もが長い間愛し続けている音楽を,一言でいい当てているようなタイトルです.
「杉の納屋」は百人一首にある「葦の麻呂屋」をもじったものです.高級住宅都市なんていっても,もとは葦で葺いた粗末な小屋の建つ所にすぎなかった.まずは見栄をなくそうと思いました.
杉というのも,木材としては日本では見捨てられていますね.戦後植林された杉を使う当てがなくて,山は荒れ放題といわれて久しいのです.昔の家は近くの山で採れた木で家をつくりました.今でも,そうすることは全然構わないでしょう.
納屋というのは、幼少期に過ごした家に隣接して建っていた物置が思い出されるのです.平屋ですが中に一部中2階で出し入れがしやすくなっている.子供のスケールにあっていたのか,よく遊んだ場所です.
「バーン」というのは農家の納屋のことです.だいぶ昔ですが「刑事ジョンブック」という映画があって、アーミッシュという昔ながらの生活を守るドイツ系の移民の村が出てくるんですが.納屋の中で男女が寝そべるワンシーンがありました.気分的に解放感というか,くつろいだ感じが素敵だったんですね.
普通の家も納屋の延長線上にあって,ヨーロッパでも例えば,フランスでもドイツでも木造の木の小屋は人気がありますよね.家具や調度類,飾り付けが魅力的で日本とは全然違って住みこなしているんです.
たまたま,これも40年前のアルバムで,ボーブランメルズというグループのCDに「ラドバリー・バーン」というタイトルをみて、これだと思ったわけです.
以前この名前でチャットをしていたら,相手にダーバンさんと呼ばれました。ファッションブランドの響きもあって,悪い気はしなかったのです.
またある人には,シーダに梵語のようなテイストがあるとも言われました.杉は英語でシダーと言うんですが,語呂合わせというか,呼びやすいように変えてみたんです.
シーダ・バーンという名前だけでも,結構想いが込められていることがおわかりになったと思います.
●伝統工法を意識しているというよりも,一種国際的感覚のある家と評されたり,窓と板戸がヨーロッパを感じさせる外観と説明されたのは,的を射ているわけですね.雑誌ニューハウスに掲載されたK邸もその雰囲気が感じられます.
▲そういった和洋の感覚がバランスよく備わっている,若い夫婦,家族の施主の典型例です.場所も都心部でなくて,ちょっと田舎というのも昔風、欧米風ののんびりした感覚が出しやすい.
プラスワンに掲載されたF邸,陶磁器で有名な立杭に建つH邸なども,それぞれ若い家族で,もちろんシーダ・バーンも一軒ごとに味わいが違いますよ.
●シーダ・バーンの強い味方というか,熱烈な若い(年配の方でも若い感覚をもった)ファンが育っている証ですね.時間がオーバーしました.では次回また.
(つづく)